voice and tuba

木下正道:双子素数 I


木下正道:双子素数 I(2011)
Masamichi Kinoshita, Twin Prime

松平頼暁氏の八十歳の記念に。
極めて知的に組み立てられながらも常に演奏家の鼓舞と聴衆の興奮を齎す氏の作品に倣いたく、この曲を作った。
素数列を双子素数の頻出ごとに切って、80+ルート80=約89の断片を用意し、さらに13×6と11の7グループに再編する(実際は5グループを使用)。それを元に最小素数原始根などをとりつつ旋律、拍節など、音楽の細部を決定していく。
歌詞は百人一首から、双子素数の若い方の番号を取る(十七、四十一番歌は事情により使用しなかった)。

三番歌
あしびきの山鳥の尾のしだり尾の ながながし夜をひとりかも寝む
柿本人麻呂

十一番歌
わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと 人には告げよ海人の釣船 参議篁

二十九番歌
心あてに折らばや折らむ初霜の 置きまどはせる白菊の花
凡河内躬恒

五十九番歌
やすらはで寝なましものをさ夜更けて かたぶくまでの月を見しかな
赤染衛門

七十一番歌
夕されば門田の稲葉訪れて 蘆のまろ屋に秋風ぞ吹く
大納言経信

数字的に決定した旋律の形に言葉を当て嵌めていく。言葉によっての音楽的分節は発生しない。言葉と旋律がそれぞれの論理を背中合わせにすり寄せる時、ある種エモーショナルで、アルカイックな音楽の姿が見えてくるのではないか、と願っての作曲である。

【木下正道・記】

双子素数I-bの解説はこちら

木下正道 Masamichi Kinoshita / 活動予定

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