voice and tuba

近藤 譲: 花橘 (3つの対位法的な歌と2つの間奏)(2013)


近藤 譲: 花橘 (3つの対位法的な歌と2つの間奏)(2013)
Jo Kondo, Hana-tachibana (Three Contrapuntal Songs and Two Interludes)

この作品は、その副題が示す通り、バリトン・パートとチューバ・パートの2声の対位法による3つの歌(第1歌「折りしもあれ」、第2歌「さみだれに」、第3歌「風に散る」)と、それぞれの歌の間で演奏される2つの短い(独奏的な)間奏から成っている。3つの歌の歌詞は、いずれも「千載和歌集」に収められている和歌で、花橘を詠っている:
(1) 折りしもあれ花たちばなのかをるかな昔を見つる夢の枕に(藤原公衡朝臣)
(2) さみだれに花たちばなのかをる夜は月澄む秋もさもあらばあれ(崇徳院)
(3) 風に散る花たちばなに袖しめてわが思ふ妹が手枕にせん(藤原基俊)
また、第1歌と第2歌の間で演奏されるバリトン独唱の(チューバの補助的な合の手を伴う)第1間奏に用いられている歌詞は、「枕草子」から、夏(花橘の季節)について述べた次のような一節である:
「夏は夜。月の頃はさらなり。闇もなほ、蛍のおほく飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし。」
《花橘》は、低音デュオの委嘱により、この演奏会のために、今年の1月に作曲された。

【近藤譲】