voice and tuba

湯浅譲二:天気予報所見


湯浅譲二:バリトンとトランペットのための「天気予報所見」(1983)
Joji Yuasa, Observations of Weather Forecasts

 この曲はUCSD音楽部(カリフォルニア大学サンディエゴ校)のファカルティ(教授)の二人が組んで演奏活動をするTHE のために作曲された。”ザ”はトランペットとバリトンの二人の教授が、音楽的な漫才といった、ナンセンスな身体的なパフォーマンスをするグループである。私は長年追求してきた言語の音響的側面の意味、つまり音楽と言語の関係に新しい光を当てるという作曲系列の一つとして、この曲を構想した。言葉(指示記号)はそれぞれが意味(指示内容)を持っているが、発音され音響化すると、内容の意味と共に、音響的側面の意味も同時に伝達する。いい例が、言葉は丁寧であっても威圧的に結果としては命令的な、慇懃無礼な表現などはそれである。音楽は本来〈音〉に基づくものであるから私は、言語の音響的側面の伝達に関心を持ちながら、言語と音楽の新しい関係に光を当てる仕事を続けてきた。この曲は、天気予報という、人間の感情から遠い客観的叙述を、様々な感情の表現を音響的に加えた、いわばミスマッチの表現から全体的に醸し出される、<音楽的な>表現を得ようとしたものである。そこには、論理的には理解できない、《センス・オブ・ノンセンス》が必要とされる。一種の身体的パフォーマンスを伴う曲。
【湯浅譲二・記】

 低音デュオは、2005年8月に秋吉台国際芸術村でその結成の端緒となるバリトンとチューバのバージョンの初演を(作曲者の監修の下)行った。以来我々デュオの演奏回数の多い曲の一つとなっている。
【低音デュオ・記】