voice and tuba

マウリシオ・カーゲル:アテム


マウリシオ・カーゲル:アテム (1970)
Mauricio Kagel, Atem

あるリタイアした木管楽器奏者。彼が常日頃から心身を捧げていること、それは楽器を最上の状態に保っておくこと 。棚に赴きケースを開き、楽器を細かく分解し、再びそれを組み立てる、キイにオイルを注し、管を磨き、残った唾液を乾燥させ、リードとマウスピースを温め、無音で練習し、絶えず楽器を磨き続けながら自分自身と対話することを楽しんでいる-その繰り返し。彼が何かを演奏することはまあめったには有り得ない。
そこに若い管楽器奏者が入場し、椅子に座り、頻繁にミュートや楽器をとっかえひっかえしながら演奏し始める。彼は殆どの音を吹き損じ、お粗末なタンギングと反応の悪い唇で、調子っぱずれの音が鳴り響く。曲が進むに従って、彼もかなり年を取り、終いには…。