voice and tuba

足立智美《ディープ・スロート》または《超低音デュオ》(2017)解説


足立智美《ディープ・スロート》または《超低音デュオ》
(低音デュオ第9回演奏会ではこの2曲のうちの《超低音デュオ》が演奏されました。)

《ディープ・スロート》は音楽におけるセックスとジェンダーと政治の問題を扱っている。ディープ・スロートは1972年に大ヒットしたポルノ映画のタイトルであり、喉にクリトリスがある女性というばかばかしい設定は、フェラチオの一形態を示す言葉にもなった。バリトンは男声であり、チューバは金管楽器の中でもとりわけ男性奏者が多いことで知られる。片方は生物学的な背景を持ち、もう片方はジェンダー・イシューである。バリトンは喉を人前に晒し、チューバ奏者は巨大な筒を口に咥える。バリトンとチューバという固有の組み合わせ、そして低音域にはセックスとジェンダーが見え隠れしている。ディープ・スロートは1972年のウォーターゲート事件、ニクソン大統領再選委員会が民主党本部の盗聴を試み失敗した事件で、ワシントン・ポスト紙へ情報を極秘に提供し続けた政権内人物のニックネームでもある。この情報提供者が誰かは完全に秘匿されヘンリー・キッシンジャーからあげくはジョージ・H・W・ブッシュの名前が取り沙汰され、アレクサンダー・ヘイグが有力な可能性とされていきたが、FBI副長官だったマーク・フェルトが2005年に自ら告白する形で決着を見た。ワシントン・ポストの記者、ボブ・ウッドワードからディープ・スロートへの接触の合図は高校生時代に嗜んでいたチューバをバルコニーでケースに出し入れすることで(これがどのように監視できたかは現在に至るまで完全な謎である)、ディープ・スロートからはニューヨーク・ポスト紙(ワシントン・ポストと違いこちらはタブロイド)へのバリトン歌手のデイティング広告という奇妙な形式をとった。ここから政治と権力と性と音楽の間の無意識の力関係がみてとれるかもしれない。

《超低音デュオ》は音楽の上演に、いかに低い音を、それも可聴音域以下の音を、とりいれるかを模索したものである。拡大していかなる周期的運動も音の延長で考えることができる。例えばこの文章も繰り返し読めば、音の延長として把握できる。この曲の構成要素のすべては以下の式で表すことができる。(音の速度が秒速345mの場合)

周波数 (Hz) = 345/メートル = BPM / 60

これによって、音程、空間、テンポを一貫した方法で扱うことが可能になる。 実際の適応においてはアナログシンセサイザーのLFOの使い方を参考にしている。すなわち増幅変調、周波数変調、フィルター操作、サンプル&ホールドである。この作品は完全に並行して作曲された《ディープ・スロート》の対であり、私の作曲作品の中では例外的に政治的な作品であると同時に、人間の可聴音域以上のみを使った純粋な電子音楽作品《超人のための音楽》とも対をなす。

《超低音デュオ》は音楽の上演に、いかに低い音を、それも可聴音域以下の音を、とりいれるかを模索したものである。拡大していかなる周期的運動も音の延長で考えることができる。例えばこの文章も繰り返し読めば、音の延長として把握できる。この曲の構成要素のすべては以下の式で表すことができる。(音の速度が秒速345mの場合)

周波数 (Hz) = 345/メートル = BPM / 60

これによって、音程、空間、テンポを一貫した方法で扱うことが可能になる。 実際の適応においてはアナログシンセサイザーのLFOの使い方を参考にしている。すなわち増幅変調、周波数変調、フィルター操作、サンプル&ホールドである。この作品は完全に並行して作曲された《ディープ・スロート》の対であり、私の作曲作品の中では例外的に政治的な作品であると同時に、人間の可聴音域以上のみを使った純粋な電子音楽作品《超人のための音楽》とも対をなす。

《超低音デュオ》は音楽の上演に、いかに低い音を、それも可聴音域以下の音を、とりいれるかを模索したものである。拡大していかなる周期的運動も音の延長で考えることができる。例えばこの文章も繰り返し読めば、音の延長として把握できる。この曲の構成要素のすべては以下の式で表すことができる。(音の速度が秒速345mの場合)

周波数 (Hz) = 345/メートル = BPM / 60

これによって、音程、空間、テンポを一貫した方法で扱うことが可能になる。 実際の適応においてはアナログシンセサイザーのLFOの使い方を参考にしている。すなわち増幅変調、周波数変調、フィルター操作、サンプル&ホールドである。この作品は完全に並行して作曲された《ディープ・スロート》の対であり、私の作曲作品の中では例外的に政治的な作品であると同時に、人間の可聴音域以上のみを使った純粋な電子音楽作品《超人のための音楽》とも対をなす。

《超低音デュオ》は音楽の上演に、いかに低い音を、それも可聴音域以下の音を、とりいれるかを模索したものである。拡大していかなる周期的運動も音の延長で考えることができる。例えばこの文章も繰り返し読めば、音の延長として把握できる。この曲の構成要素のすべては以下の式で表すことができる。(音の速度が秒速345mの場合)

周波数 (Hz) = 345/メートル = BPM / 60

これによって、音程、空間、テンポを一貫した方法で扱うことが可能になる。 実際の適応においてはアナログシンセサイザーのLFOの使い方を参考にしている。すなわち増幅変調、周波数変調、フィルター操作、サンプル&ホールドである。この作品は完全に並行して作曲された《ディープ・スロート》の対であり、私の作曲作品の中では例外的に政治的な作品であると同時に、人間の可聴音域以上のみを使った純粋な電子音楽作品《超人のための音楽》とも対をなす。
【足立智美】

【足立智美 あだち・ともみ】
パフォーマー/作曲家/音響詩人。声、コンピュータ、自作楽器によるソロ演奏を始め幅広い領域で活動し、ジョン・ケージ、コーネリアス・カーデュー、クリスチャン・ウォルフなどの作品の上演、企画の他、ヤープ・ブロンク、坂田明、ジェニファー・ウォルシュ、リチャード・バレット、M.C.シュミット(マトモス)、高橋悠治、一柳慧、伊藤キム、コンタクト・ゴンゾ、猫ひろしらと共演、また非音楽家との大規模なアンサンブルのプロジェクトもおこなう。作品には自作のフィジカル・インターフェイス、ツイッター、脳波から人工衛星、テレパシー、骨折までを用いる。世界各地のオルタナティヴ・スペースの他、テート・モダン、ポンピドゥー・センター、ベルリン芸術アカデミーなどで公演、2012年にはベルリン・メルツ・ムジーク現代音楽祭で個展を開催、DAADより2012年ベルリン滞在作曲家としてドイツに招聘。