川浦義広《アクセス・ポイントI》(2013/17)解説


川浦義広《アクセス・ポイントI》

私は4年ほど前から「アクセス・ポイント」と題したシリーズ作品を作曲している。いずれも声楽と器楽のための作品であり、言葉のもつ様々な側面に焦点をあてることを主眼としている。この作品はシリーズ第1作目であり、「日本語自体を聴く」ということをコンセプトに、日本語固有の響きを捉えるアクセス・ポイントの形成と提示が作品のテーマとなっている。今回は日本語の特性である「時代ごとに変化・発展する特徴」や「時代ごとの言葉の響き」に着目し、テキストに古代から近代までの和歌集から様々な言葉を抜粋したものが用いられている。和歌、とりわけ短歌という形式に限定したのは、古代から日本語表現の形式として存在し、現在までその形式が受け継がれており、日本語の変遷を明確に描くことが可能であるという点による。
 作品は古文から現代文へと文体が推移する構造をしているが、古文においては音響的側面から言葉を捉え直し、子音や母音等音素によってテキストを分解及び再構成し、バリトンとテューバ間でその音響的特性を強調し、一方現代文においては擬態語等古歌にはあまりみられない特徴的な言葉を取り出して様々なパルス構造で提示を行うことによって文体の推移を構造化しようと試みた。【川浦義弘】

【川浦義弘 かわうら・よしひろ】
1993年埼玉県出身尚美学園大学音楽表現学科卒業、現在同大学院に授業料減免特待生として在学中。学部において授業料全額免除特待生として在籍し、3年間に渡り在学特待生に選出される。尚美学園大学優秀学生彰、尚美学園大学後援会賞、第84回日本音楽コンクール作曲部門入選、第21回東京国際室内楽作曲コンクール第2位(1位なし)受賞。作品はこれまで、アンサンブルプラティプスや東京シンフォニエッタ等内外の演奏家によって演奏・紹介されている。作曲を山下恵、小島有利子、川島素晴、渋谷由香の各氏に、ピアノを鵜木日土実、指揮を新田孝の各氏に師事。