湯浅譲二《ジョルジョ・デ・キリコ》(2015)解説


湯浅譲二《ジョルジョ・デ・キリコ》

テューバの橋本さん、バリトンの松平さんとは、すでに親しくお付き合いをしている間柄である。お二人とも「天気予報所見」は何度も共演していただいているし、橋本さんには、「ぶらぶらテューバ」や「テューバ・ローカス」、松平さんにはR.D.レインからの二曲、「私は夢をみた」「愛は降りくる雪…」を歌っていただいている。さて、この御両人の、特異な組合わせ、「低音デュオ」のために書く新作は、単なる歌曲、しかもテューバの伴奏ではあり得ないと感じて、いわば、特異な詩を求めて、超現実主義詩集を読みあさった。しかし、文字を読まずに、特異なイメージの出会いを、単なる言葉の音声から聴きとることは不可能に近く、ようやくたどりついたのが、ポール・エリュアール詩になる「ジョルジョ・デ・キリコ」である。この詩は、キリコの絵を詩で表現していると言うよりは、キリコの絵画のイメージを背後に漂わせながら、エリュアール独特の詩である、と思った。声とテューバは、互いに自己主張しながら、異次元の世界を主張していく、まさに低音デュオならではの世界を現出させようと、努力した。【湯浅譲二】

【湯浅譲二 ゆあさ・じょうじ 】
1929年、福島県郡山市に生まれる。作曲は独学。慶応大学医学部進学コース在学中より音楽活動に興味を覚えるようになり、やがて芸術家グループ<実験工房>に参加、作曲に専念する。以来、オーケストラ、室内楽、合唱、劇場用音楽、インターメディア、電子音楽など、幅広い作曲分野で活躍している。これまでクーセヴィツキー音楽財団、ヘルシンキ・フィルハーモニー交響楽団、NHK交響楽団、東京都交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、サントリー音楽財団、IRCAMなどから、多数の委嘱を受けている。1981年より94年まで、カリフォルニア大学サン・ディエゴ校(UCSD)教授として、教育と研究の場でも活躍。尾高賞、日本芸術祭大賞、サントリー音楽賞、芸術選奨文部大臣賞、紫綬褒章、恩賜賞、旭日小綬章など、受賞多数。現在、UCSD名誉教授、国際現代音楽協会名誉会員、文化功労者。

歌詞はポール・エリュアール(訳:巌谷國士)。訳詩は以下に所収。